豆を挽くために

ミルやグラインダーを使う目的は、鮮度の高い状態で飲むためだけではありません。任意の粒度に豆を粉砕するという、重要な役割があります。細挽きと荒挽きでは、コーヒーの濃さや味の出方ががらりと変わります。これは挽いた豆の粒度と湯温の関係で、液体に抽出されるコーヒーの成分バランスが変化するからです。粉が細かく湯温が高いほど、濃く重い味わいになり、粉が荒く湯温が低いほど薄く抽出不足になります。理想的な抽出技術を身につければ、苦味・酸味・甘味・コクのバランスがとれた美味しいコーヒーをカップに落とせるでしょう。

やっかいな問題は、ミルやグラインダーが均一な粒度分布で粉砕できない点にあります。仮に中挽きにセットしても、粉砕された粉には荒挽きから細挽き、さらには微粉まで混ざるバラツキがあります。このうち微粉の量がどれだけあるかによって、コーヒーの味わいを大きく左右します。微粉は極端に細かいため、すべての成分が短時間で一気に出てしまい、いわゆるマイナス要素である「雑味」の原因になります。その上、ドリップやサイフォンではフィルタの目詰まりを招いて抽出過多になったり、フレンチプレスやエスプレッソでは金属フィルタを通過し、舌がざらつく不快な質感を及ぼします。まったく、困ったものです。

ミルやグラインダーの微粉量は、値段に反比例する傾向にあります。乱暴な言い方をすれば、価格の低いものは微粉の混入率が高く、高価なものは微粉が少ないです。最も微粉が少なく均一に粉砕できるのは、加工品工場や大手メーカーが使う工業用ロールグラインダーですが、いくら何でも家庭やオフィスではあり得ません。カフェで使われている業務用のフラットカッターかコニカルカッターが限界でしょう。これらを家庭向きに小型化した、ハイエンドモデルのフラットカッターかコニカルカッターが現実的な上限になると思います。といっても軽く20万円を越える価格です。ところが2,000円でお釣りがくる、歯が回転式のブレードグラインダーもあったりします。さあ、どうしたものでしょう。