というわけで、もしもカフェバッハでゲイシャ単品を注文すると、多くの人に喜ばれそうなバランスで焙煎されたコーヒーが出てくるかもしれません。いやいや本当の個性がどんなものなのか知りたいのだ、ならば他の有名な喫茶店か、どこか専門店で豆を買おうか、というのはリスク高すぎです。ゲイシャ本来の素顔を味わってみたければ、迷わず東京ビッグサイトで9月に開催するSCAJに行ってみるようお勧めします。小売店ブースより、商社ブースで驚きの風味を体験できます。お勧めする理由は、生産者に近い商社の方が個性をより明解にアピールできているからです。また、イベント会場では選ばれたひとつの豆を複数のロースターが競い合う焙煎コンペティションも催され、入場者は誰でも自由に飲み比べできます。焙煎によってこうも違うのかと、きっと楽しい経験になります。
カフェバッハは小泉元首相お気に入りの喫茶店で、沖縄サミットで指名された田口護さんは、自らのバッハブレンドで各国首脳をもてなしました。コーヒー嫌いのクリントンがお替わりした、という逸話があるぐらいだから、よほど美味しかったのでしょう。これは、必ずしもシングルオリジンの香味が最上ではないことを、見事に表わしている逸話です。コーヒーを知り尽くし、人の気持ちをとろかせることができる表現者だからこそ、ブレンドで本領を発揮できるのだと思います。