パナマ/ラ・エスメラルダ農園

先入観があるせいか、美しいです、ゲイシャ。大きな面光源で撮影しているため、写真は実物の魅力を再現できていません。肉眼で見た印象は、もっと灰緑色に深みがあり、実の締まりぐあいを感じさせる光沢があるのですが、豆を同じ条件下で撮影・比較していこうと決めたのでご容赦を。。
写真上側のピーベリーと小粒な豆は数%で、全体のほとんどは下側のロングベリーが占めています。欠点は100g中1粒でした。直径3mmほどのごく浅い部分発酵です。銀皮はやや多目で、焙煎士の仕事を増やすかもしれません。それでも、割れ豆欠け豆すら1つもないのは驚きです。ティピカに似た細長いゲイシャは、エチオピアが起源の原種とされています。果たして本当なんでしょうか? 進化したモデル体型の現代女性に見えてしかたないです。

豆からすでに香っているフルーティーさは、挽いたとたん甘酸っぱさ爆発です。カッピングで湯を注ぐとシトラスとジンジャーの印象。口に含むと、この印象にベリーが加わってきました。ただ、SCAJイベントで試飲したときの、ピーチやラフランスを連想させるエステルは感じられませんでした。甘さは冷めるにつれて増します。シルキーな甘さといえばいいんでしょうか、滑らかでゴージャスです。

同じ粒度の細挽き12gを、V60で4分かけて140cc抽出。もちろん香りを活かすよう熱湯です。ジンジャーの印象が後退し、華やかな柑橘系の香りが前面に溢れました。じっくり注いだことでボディもぐんと現われます。
新しいコーヒーでは、必ず1,2回は出がらしに湯を注いでチェックするのですが、結果は予想に反してマイナスに転ぶ雑味がありました。そこで条件を同じにしてプレス抽出してみました。時間は少し短く3分30秒。苦味とボディが弱まる分、酸と鮮やかさを増し、ジャスミンティーのようです。抽出後の粉をほじくり返してもネガティブな臭いは感じられず、出がらし抽出でも少量の湯なら悪くありません。最終的にドリップでは、抽出時間3分が最もこの豆の個性を発揮できているようでした。

良い豆は美味しいコーヒーの主役であり、抽出は助演俳優の演技にあたるのか。主役がどう映るのがよいかを考えたとき、自分の好みを引っ込めてみるのはいい経験でした。印象や味わいは淹れ方によってずいぶん変わる、ということを改めて感じます。

 

● Beans Data ●

生産地: パナマ共和国、チリキ県ボケテ地区、ラ・エスメラルダ農園 品種: ゲイシャ 標高: 1,450~1,700m スクリーンサイズ、欠点ともに規格なし 精選方法: 水洗式(Fully Washed) 収穫年度: 2011クロップ 掲載写真の焙煎度: シティ