どれがSL28で、どれがSL34なのか? 他の品種があるならK7なのか? 注意して眺めると、少なくとも2つのグループに分けられます。1つ目は写真上のブルボンに似た、センターカットが緩やかに弧を描いて片端で大きく切れ込んでいる品種。2つ目は真ん中の、センターカットは比較的真っ直ぐに伸び、片端は切れ込まない品種です。写真下の丸型で小振りの豆は大きさや形こそ違うものの、どちらの特徴も見られ、2つのグループが混ざった生育状態の違いではないかと思えます。ルーペでじっくり観察した限りでは、2つの品種以外の特徴は見当たりませんでした。他の農園の豆を混ぜられていたとしても、脱殻のされ方やシルバースキンの残り方は同じ処理に見えます。ニュークロップの、粒の揃った極めて美しい豆です。これらの品種に興味のある方は、SL28とSL34についてはSweet Maria’s Coffee Glossaryを、ケニアコーヒーの概要についてはこちらを参照ください。
しっかりしたチョコレート感。黒蜜のような甘み。赤のビンテージワインを思わせる熟成した果実感。これらが突出せず、一体化したまろやかさで魅了してくれます。ケニア特有のワイルドさ、油断すると顔を出す暗い重厚さは影を潜め、とてつもなく品の良い、芳醇かつ格調高い味わいです。絶妙なバランスと奥行きは、とてもシングルオリジンとは思えず、協調された完成度の高いブレンドのようです。長く甘く続く余韻を含め、素晴らしいの一言です。。
突然変異や自然交配は理解できますが、生産側の都合で作られたスコットラボラトリーやルイル、ハイブリッドに否定的でした。飛躍しすぎは承知しているものの、レイチェル・カーソンの沈黙の春を連想してしまうからです。農薬とは無関係なはずですから、偏見以外の何ものでもないとは思います。ただ自分は、収量を上げること、病害虫に強い品種改良を行うこと、そういった人間中心の、農産物を強引にコントロールしようとする発想と結果が信用できなかったからです。
でも、認識を変えなくてはいけないようです。飲んだ印象は生産効率を目指すより、香味を求めた結果にしか映りません。それも、とんでもなく高いハードルを越えた成果に感じられます。ケニアコーヒーに夢中になり、虜になっていった研究者の姿が、ぼんやり目に浮かんでくるようです。
● Beans Data ●
生産地: ケニア共和国、キリニャガ地区 品種: SL28、SL34など スクリーン: SC18 規格: AA TOP 標高: 不明 欠点: 規格なし 精選方法: 水洗式(Fully Washed) 収穫年度: 2011クロップ 掲載写真の焙煎度: フルシティ kenya Kiangai coffee factory