おバカな手網焙煎

ためしてガッテン!幻の昆布」編では、たった1時間で何年も熟成させた超高価な昆布に匹敵する逸品を作る、という内容でした。昆布のヌルヌルの元となる多糖類に、日本酒と熱を加えることによってアミノカルボニル反応を起こし、長期間かけた自然熟成に近い旨味成分や味わいが得られるのだそうです。ただ、興味はこれじゃなかったので昆布は試していません。

コーヒー生豆の成分の半分以上を占める多糖類は、焙煎によってメイラード反応(褐変反応)を起こし、コーヒーならではの色と味わいになります。焙煎を始めて変色が見られるころには、何とも甘い香りが立ちこめてきます。しだいに褐色の度合いを強めてゆくわけですが、この作用もアミノカルボニル反応の一種であり、まさに焙煎に応用できそうであります。
また、ナチュラルやパルプドナチュラルといった精選方法も、果肉や多糖類であるミューシレージをなじませるのは熟成昆布に似た効果があるとしか思えません。ひらめきは良かったのですが、単純にアミノ酸と糖分を生豆に追加して「旨く甘く」ならないものかと安直に考えました。

具体的には日本酒がなかったので、代わりに味醂を生豆に良くもみ込み、薄く飴状にコーティングしてから焙煎しました。実際の焙煎では、豆の反応が起きるより先に表面の味醂からメイラード反応が始まります。味醂を焦がさずに豆にカロリーを加えるのは至難の技でありますね、やってみると。最初は焦がしてしまいましたが、2回3回目になると何とか焦がさず豆に火を通すことはできました。水分抜きに当たる最初の6、7分を倍の14分に延ばし、中火の遠火で、最終的に29分の焙煎でした。これより短いと、表面の味醂がローストの限度を越えてしまうようです。
2ハゼが始まって即冷却。左の写真は同じ焼き上がりのはずのシティのWIB-1を隣に並べた比較です。見た目はフレンチローストだけど、豆の中身はシティですから、何とも奇妙な仕上がりです。割ってみると色はシティで、一応中まで火は通っているようでした。シワもそこそこ伸びています。使った生豆は水洗式ながら、味醂がよく染み込んだのかセンターカットは色づいてナチュラルっぽいです。

十分バカな行為と承知してますので、あまり旨くない古い豆を使いました。結果としては「贔屓めに見て」煙は感じない香ばしさがあり、コーヒーらしいチョコレート感と黒糖を連想させる香味があります。もちろん、スペシャルティコーヒーのようなフルーティーさや奥行きは皆無ですが、決して悪くないです。
でもって旨味成分なんですが、これは処理前と後の比較をしていないので分かりません。記憶からすれば、間違いなく+αだと思います。焦がさなければ、確かに蘇るようでした。