コーヒーは体を冷やす??

真夏の暑い日にスイカやマンゴーを食べると、火照った体の熱がひく感覚があります。このことから「暑い国や暑い季節に穫れる果物は体を冷やす」という説明は何となくうなずけます。しかし、「コーヒーは暑い国で穫れる食品だから体を冷やす」?? これは腑に落ちません。特に、冷え性の人に良くない=体を冷やす=免疫力を衰えさせる、といった悪者扱いには疑問を感じます。科学的な裏づけを示されればぐうの音も出ませんが、理由のほとんどは根拠に乏しく、コーヒーが体を冷やす食品と決めつけるのは乱暴すぎるように思えます。

一般に飲まれているコーヒーのおよそ7割はアラビカ種で、この品種が栽培される条件として、適度に標高もあって避暑地さながらの快適な環境が必要です。しかも強い直射日光が当たりすぎても健全に育ちません。赤道を挟んだ熱帯だからといって、ひとくくりに「暑い国」に当てはめるのは無茶じゃないでしょうか。
ちなみにリキッドタイプのアイスコーヒーや、インスタントコーヒー、缶コーヒーなどはもう一方の品種、カネフォラ種が原材料に使われている場合が多いです。こちらは標高が低く直射日光や高温多湿にも強い、まさに熱帯気候産の作物です。この場合なら「暑い国で穫れる食品」という考え方も当てはまります。暑い季節になるとカネフォラ種のコーヒー消費が圧倒的に増える、なんて現象が起きれば「一理ある」のかもしれません。

いくら暑い真夏でも、冷たい物ばかり摂っていたら体に良いはずがないです。だからといって、暑い盛りに冷たい飲み物を我慢するなんてのもナンセンスです。ほどほどに、ぐらいで収まらないものでしょうか。
アラビカコーヒーには果実の風味もあり、夏は氷で冷やして飲めば爽やかさ涼しさを味わえます。冬に飲むホットコーヒーは、体を冷やすどころか、逆に身もこころも温まります。妙な不安にあおられたりせず、おいしいコーヒーを楽しんでください。

 

 

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体を温める食品と冷やす食品
帝京大学医学部外科 准教授 新見正則