外見の特徴を端的に表わすのは、難しかったです。。 コーヒーのプロならば容易に判別がつくのでしょうが、今の自分にはブレンド豆にしか見えませんでした。
左の写真を見ると分かるように、上は楕円形の大粒、下は円形のやや小粒と、スクリーン18以上のダブルA規格であってもバラつきがあります。これは生豆をスクリーン選別機でふるいにかけて選別するため、どうしても18より小さいサイズが混入するのだそうです。しかも大きさだけでなく、明らかに異なった品種が複数混じっているように見えます。ブルボンやティピカにやや似たもの、中米産にしか見えない小粒の丸豆など。
単なる空想に過ぎないのですが、国やしっかりした団体に管理されることなく、様々な品種がケニア各地に持ち込まれて交雑が進んでいった歴史があるのかもしれません。交雑という言い方はどこかネガティブなイメージがつきまといますが、決して悪いことではありませんし、むしろ人間や自然の淘汰によって強く上質に改良されていったのではないかと思います。ケニヤが持つ風味の地位は不動のものとしてすでに確立していますし、備えている個性が強いだけに、他に替わりになる豆はあまりないです。
逆にケニアらしい個性を維持するために、様々な地域の様々な農家から一括して集め、専門家たちの吟味された配合によって出荷されているのではないかと妄想しました。
ちなみに、赤道にまたがるケニアでは1年に2度の収穫があります。これは同じ樹から2度獲れるのではなく、地域や標高などの栽培条件によって収穫時季がずれてまばらなので、便宜上春型と秋型に区別しているわけです。こうした事実も、年間に渡って安定した風味を供給できる背景になり得ます。右の生豆は100g中から見つけた欠点豆ですが、致命的な欠点はごく数粒しかありませんでした。欠点数の規格を定めていない国の生産物としては、極めて安定していて品質が高いです。日本に輸入されているスタンダードな豆の中でも、特にケニアはクオリティが高いと感じます。
一般的にケニアは酸味が強いため、シティやフルシティ、もしくはそれ以上でローストされることが多いです。つまり深煎りに十分耐える豆であり、敬遠されるような苦味にはなりにくいということが言えると思います。
このシティでは、果実や黒いブドウの熟成したワインを思わせるような深い酸味があり、はっきりとしたチョコレート感もあります。ケニアの場合だとシティローストは浅い部類に入りますが、特有の重厚さや控えめな甘さもちゃんと備えています。個人的には、フルシティを超えると重厚さが重苦しさに感じられる時もあります。苦味については決して刺々しいものではなく、むしろまろやかで、カップ全体の深い味わいにつながっています。目の前にアフリカの大地が広がるような、何とも複雑で力強い香りと味で、口に含む前に唾液が湧いてきてしまうほどです。
もしケニアは重くて苦手だという人は、カップが冷めるまで待つか、冷たすぎないアイスコーヒーにすると認識が一変すると思います。ぼくは中南米系の豆で焙煎に失敗したとき、よくこのケニアのお世話になっています。味のぼやけた失敗コーヒーが救われるだけでなく、カップ1杯あたり10粒混ぜるだけでグッと美味しくなります。
● Beans Data ●
生産地: ケニア共和国、地域は不明 品種: 不明 スクリーン: 18up 規格: AA 標高、欠点ともに規格なし 精選方法: 水洗式(Fully Washed) 収穫年度: 2009クロップ 掲載写真の焙煎度: シティ Kenya AA