NHKのスーパープレゼンテーションで、ボノの “貧困問題の良いニュース” が放映されました。様々な貧困撲滅活動によって、今では「5歳未満の子どもの年間死亡数は265万人減少。1日当たり7,256人の子どもの命が救われている」 そうです。ボノは、さらに良いニュースを知らせます。支援する人々の努力の成果として、絶望的な貧困状態で暮らす人の数が確実に減りつつある、2030年に貧困はゼロになる可能性がある、というデータをモニタに映します。しかし貧困撲滅は容易ではなく、実現には何が必要か、いくつもの具体的な支援例を聴衆に示しました。自らを“救世主気取り” とおどけてみせ、困難な挑戦を諦めず、ポジティブな姿勢で向かうボノの姿に会場はスタンディングオベーション、胸が熱くなるスピーチでした。
たまたま読んでいた絵本 《コーヒーを飲んで学校を建てよう》 と、 《コーヒー危機・作られる貧困》 をもう一度開いてみました。前者の絵本は、家族的な支援を得て幸福な歩みを始めたタンザニア・ルカニ村の例。後者は、様々な団体が様々な方法で貧困の解決に取り組んでいるものの、現実には依然としてコーヒー農家は危機に陥ったままという悲惨な状況を描いた本です。なぜこんなにも差があるのか、キツネかタヌキに化かされたような気分です。
ボノが例に挙げたサハラ以南のアフリカ10カ国では、2012年に約650万人の子どもが死亡しました。ボノの発表をネガティブな表現にすると「毎日17,000人の子どもの命が失われた」ことになり、言い方が違うだけで、これもまた事実です。子どもたちは学校に行けないどころか、まともな食事を摂れず、まともな医療を受けられず命を落しているのだそうです。どうしてこんな不公平が起きているんでしょうか?膨大な取引量のコーヒーが産み出す利益は、一体どこへ消えてしまうのか? 誰かが私腹を肥やしているんでしょうか? ひょっとすると自分も、知らず知らずのうちに貧困に加担してるのではと不安がよぎります。
スペシャルティコーヒーを飲むと、色彩豊かなイメージや現地の人の笑顔が頭に浮かんできます。額に入った左の写真は Sweet Maria’s Coffee から届いたポストカードで、普段飲んでいるコーヒーのイメージにぴったりだったので机に飾っています。また、エチオピアは貧困に苦しんでいるはずなのに、なぜか自分の飲むコーヒーからは幸せなイメージしか浮かんできません。これはたまたま、先の絵本に似た恵まれた農協で作られたからなんでしょうか? 《コーヒーの扉をひらこう》 を読むと、農家が希望を見出せる関係づくりがリアルに伝わってきます。産直で取り引きしていたり、カップオブエクセレンス・プログラムのような先物市場を通さない高品質コーヒーは、生産者が労働に見合った報酬を得られているようにうかがえます。どうも自分の身の回りにあるコーヒーからは、貧困が似合わない幸福感あふれるイメージしか伝わってきません。ところが現実は、そんな状況ではなさそうだということがわかってきました。
疑問が消えないうちに、無知のうちの知を増やしていこうと思います。なるべくたくさん本を読んだり人に聞いて、浅くでも広く理解したいです。鵜呑みにせず、自分なりに判断して、イメージと現実のギャップを埋めていきたいです。