コスタリカ/ラ・カンデリージャ農園

SCAJ2011最終日の30日、コスタリカのブースに「レーチェ」もしくは「ミルキー」といったヒントがないか探していたら、なんと講師のリカルドさんが「やあ、セミナーに来ていたね」と声をかけてくれました。運良く横にいた日本人女性のスタッフが「カッピングの答えが僕と一緒だった」と通訳してくれ、声をかけられた上に褒められ、クルクル舞い上がってしまいそうでした。それでもまずは、焙煎で変わる香味の違いを知ることができて有意義だったこと、貴重な体験に感謝していると通訳していただきました。

会場で疑問に思った「ハニープロセス」について質問したところ、詳しく答えてくれました。パルパーで果肉を除いたあと、およそ半分のミューシレージを残し、甘味成分をじっくり種子に移すとのこと。どこがパルプドナチュラルと違うのかを尋ねたら、アフリカンベッドにて3日間乾燥、その後パティオで8日間乾燥し、ムラにならないよう手間をかけて品質管理している、さらに電子選別とハンドピックによる精選が行われ、精選度の高さが一般的なパルプドナチュラルと違うとのこと。天気によっては機械乾燥も行うそうで、経済的に豊かなコスタリカでは、恵まれない他の生産国よりも設備投資が進んでいるのでしょう。最も印象的だったのは、「ハニープロセス」と発音する声の調子から、並々ならぬ思いが伝わってきたことでした。まるで生産者から話を聞いているように思えたほどです。甘味を重視しながら精選度を高める努力、カネフォラ種の栽培を法律で禁止した徹底ぶりも、国をあげてコーヒーの品質向上に賭ける情熱がうかがえます。

ちなみに自分の関心事だった「レーチェ」「ミルキー」という問いには、リカルドさんはまったく食いついてくれませんでした(笑)。ミルキーな風味はコスタリカコーヒーの特質ではないかと伝えるべきだった気がして、ちょっと後悔しています。せめてコミュニケーションできるレベルの英語は習得しないといけないなと再確認。
リカルドさんは、ぱんぱんに膨れた1lbパックのコーヒーを渡してくれました。「セミナーで話した甘味と酸味、フローラルな香りを楽しんでください。焙煎6日目で飲み頃、非常に良い豆です」 しかもエスプレッソに最適とのことで、うれしかったです。残念ながら生豆はありません。あればかぶりつきで撮影したかったけれど、十分過ぎる厚かましさのため控えました。

上質な酸は新鮮なアプリコットを連想させ、淡い花の蜜の甘味、そして控えめなミルクチョコレート、口当たりはシルキー。どうも自分はレーチェハニーの印象が焼き付いているのか、微かではあるけれど確かにミルキーな印象を受けます。このミルキー感はコスタリカと近隣地域のコーヒーに感じられるもので、品種というより地域の特質ではないかと思っています。鮮やかなフルーティーさを誇るシングルオリジンと違い、花や果実を柔らかく印象づける舌触りなのです。もっと正確に言えば、シルキーな舌触りにミルクの甘味と柔らかなコクをレンダリングしたミルキーさでしょうか。苦味を忘れてしまうマイルドさながら、なんとも豊かなボディがあります。

 

● Beans Data ●

生産地: コスタリカ共和国、タラマンカ山脈南西部、Tarrazú地区、ラ・カンデリージャ農園 品種: ブルボン スクリーン: 規格なし 規格: SHB(Strictly Hard Bean) 標高: 1500 ~ 1600m 欠点: 規格なし 精選方法: ハニープロセス(Honey process ≒ Pulped Natural) 収穫年度: 2010クロップ 掲載写真の焙煎度: シティ Costa Rica  La Candelilla Estate